二科会展覧会雑感
寺田寅彦

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)障碍《しょうがい》になり

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)吾々|素人《しろうと》に許された特典

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「虫+獵のつくり」、第3水準1−91−71]
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 同じ展覧会を見て歩くのでも、単に絵を見て味わい楽しもうという心持で見るのと、何かしら一つ批評でもしてみようという気で見るのとでは、見る時の頭の働き方が違うだけに、その頭に残る印象にもかなりの差があり得る訳である。尤もほんとうに絵を味わい楽しむためには、ある意味での批評をしなければならない事は勿論であるが、しかし、意識的に批評のための批評をしようという心持があっては、芸術品を楽しみ味わう邪魔になるばかりでなく、却って本当の正しい批評をすることの障碍《しょうがい》になりはしまいか。この点はプロフェッショナルな批評家の、苦心の要るところだろうと想像される。
 自分等のようなものが絵の展覧会
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