の正月が割合に鮮明な絵となって、そうして対幅《ついふく》のようになって残っているのか。どちらも南国の旅の正月であったが、単にそれだけのことであるのか。まさか有田の乞食婆の喰っていたあの唐辛子のかかった真赤なうどんと、ポツオリの旗亭のトマトのかかった赤いスパゲッティとの類似のためであろうとも思われない。しかしこの二つの、時間的にも空間的にも遠く距《はな》れた心像をつなぎ合せている何物かがあるだけはたしかでなければならない。そうしてこれはやはり実に恐るべき現象でなければならない。[#地から1字上げ](昭和五年二月『文芸春秋』)
底本:「寺田寅彦全集 第一巻」岩波書店
1996(平成8)年12月5日発行
入力:Nana ohbe
校正:松永正敏
2004年3月24日作成
青空文庫作成ファイル:
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