に蓄積して窒息死を起こしたのではないかというのである。これが冬期だといったいの水温がずっと低いために悪いガスなどの発生も微少だから害はないであろう。これは想像である。
それにしても同じ有害な環境におかれた三尾のうちで二つは死んで一つは生き残るから妙である。
水雷艇「友鶴《ともづる》」の覆没《ふくぼつ》の悲惨事を思い出した。
あれにもやはり人間の科学知識の欠乏が原因の一つになっていたという話である。
忘れても二度と夏の夜の金魚鉢《きんぎょばち》に木のふたをしないことである。
十六
野中兼山《のなかけんざん》が「椋鳥《むくどり》には千羽に一羽の毒がある」と教えたことを数年前にかいた随筆中に引用しておいたら、近ごろその出典について日本橋区《にほんばしく》のある女学校の先生から問い合わせの手紙が来た。しかしこの話は子供のころから父にたびたび聞かされただけで典拠については何も知らない。ただこういう話が土佐《とさ》の民間に伝わっていたことだけはたしかである。
野中兼山は椋鳥が害虫駆除に有効な益鳥であることを知っていて、これを保護しようと思ったが、そういう消極的な理由で
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