藤棚の陰から
寺田寅彦
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)明治神宮外苑《めいじじんぐうがいえん》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|鉢《はち》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)鐃※[#「拔」の「てへん」に代えて「金」、第3水準1−93−6]
−−
一
若葉のかおるある日の午後、子供らと明治神宮外苑《めいじじんぐうがいえん》をドライヴしていた。ナンジャモンジャの木はどこだろうという話が出た。昔の練兵場時代、鳥人スミスが宙返り飛行をやって見せたころにはきわめて顕著な孤立した存在であったこの木が、今ではちょっとどこにあるか見当がつかなくなっている。こんな話をしながら徐行していると、車窓の外を通りかかった二三人の学生が大きな声で話をしている。その話し声の中に突然「ナンジャモンジャ」という一語だけがハッキリ聞きとれた。同じ環境の中では人間はやはり同じことを考えるものと見える。
アラン・ポーの短編の中に、いっしょに歩い
次へ
全19ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
寺田 寅彦 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング