しろいものを見せてやろう」といって見せてくれたのは、シナの某地の地形図であった。やはり二十メートルごとぐらいの等高線を入れてあったが、それが一見してほとんどいいかげんなでたらめなものであるということがわかった。等高線の屈曲配布にはおのずからな方則があっていいかげんなものと正直に実測によったものとは自然に見分けができるのである。
その時に痛切に感じたことは日本の陸地測量部で地形図製作に従事している人たちのまじめで忠実で物をごまかさない頼もしい精神のありがたさであった。ほとんど人跡未到な山の中の道のない所に道を求めあらゆる危険を冒しても一本の線にも偽りを描かないようにというその科学的|日本魂《やまとだましい》のおかげであの信用できる地形図が仕上がるのである。そういう辛酸をなめた文化の貢献者がどこのだれかということは測量部員以外だれも知らない。
登山流行時代の今日スポーツの立場から嶮岨《けんそ》をきわめ、未到の地を探り得てジャーナリズムをにぎわしたような場合でも、実は古い昔に名の知れない測量部員が一度はそこらを縦横に歩き回ったあとかもしれない。
上には上がある。測量部員が真に人跡未到と
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