ど小さなもので、普通の意味の顕微鏡的な塵よりも一層微細なものではないかと疑いが起る。
普通の顕微鏡では見えないほどの細かい塵の存在を確かめ、その数を算定するために、アイケンという人が発明した器械がある。その容器の中の空気に、充分湿気を含ませておいてこれを急激に膨張させると、空気は膨張のために冷却し含んでいた水蒸気を持ち切れなくなるために、霧のような細かい水滴が出来る。この水滴が出来るためには、必ず何かその凝縮する時に取りつく核のようなものが必要であって、これがなければ温度が下がっても凝縮は起らない。従ってこの際出来る水滴の数を顕微鏡で数えれば、そのような凝縮核の数が分る勘定である。この器械で研究してみると、通俗な意味で塵と称するものでなくても、凝縮の中核となるものは色々ある。特に荷電されたガスのイオンのようなものでも湿気が充分多くていわゆる過飽和度が高ければ、やはり凝縮を起す事が明らかになった。しかし実際の空気中ではそれほどの過飽和状態はないから、雲や霧の凝縮を起すものはそれよりも大きいものであろうと考えられる。それは色々な湿気を吸いやすい化合物の分子の多数集まった集団のようなもので
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