人と奥州人がある。ロマンチシズムとクラシシズムの両極の間に世界が回転する。
五
「物理学はエキザクトサイエンスである。」この言葉ほどひどく誤解されてそしてそのおかげでエキザクトな物理学の進歩を阻害している言葉はない。
「量的に」この言葉も同様である。
六
「中等教科書に現われた物理ほど非物理的な物理はない」こんなパラドクシカルな事もある意味では言えない事はない。なんとならば、ほんとうはよくわからない事がちゃんとわかっているかのように読まれうるから。同じような理由からこんな事も言われる。「良い書物ほど悪い書物である。」
七
A is B, A is not B. この二つの命題は両立しうる。なんとなればそれぞれの終わりに if C is D, if C is E. という文句が抜けているのが普通である。われわれはこの事を忘れて果てのない議論に時間を空費している。
八
「唐土にても墨張とて学問にあまり精を入れしゆえにつりし蚊帳《かや》が油煙にてまっ黒になりしという故事に引きくらべて文盲儒者の不性《ぶしょう》に身持ちをして人に誇るものあり。いかに学問
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