神話と地球物理学
寺田寅彦
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)明瞭《めいりょう》に
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)皆|震《ゆ》りき
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から3字上げ](昭和八年八月、文学)
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われわれのように地球物理学関係の研究に従事しているものが国々の神話などを読む場合に一番気のつくことは、それらの説話の中にその国々の気候風土の特徴が濃厚に印銘されており浸潤していることである。たとえばスカンディナヴィアの神話の中には、温暖な国の住民には到底思いつかれそうもないような、驚くべき氷や雪の現象、あるいはそれを人格化し象徴化したと思われるような描写が織り込まれているのである。
それで、わが国の神話伝説中にも、そういう目で見ると、いかにも日本の国土にふさわしいような自然現象が記述的あるいは象徴的に至るところにちりばめられているのを発見する。
まず第一にこの国が島国であることが神代史の第一ページにおいてすでにきわめて明瞭《めいりょう》に表現されている。また、日本海海岸には目立たなくて太
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