し、非科学的なあるいは科学に無理解な御役人達の政治の支配下から解放して健全な発達を計るのが国家百年の大計のために甚だ望ましいことではないかという気もする。
 以上は新春の屠蘇機嫌《とそきげん》からいささか脱線したような気味ではあるが、昨年中頻発した天災を想うにつけても、改まる年の初めの今日の日に向後《こうご》百年の将来のため災害防禦に関する一学究の痴人の夢のような無理な望みを腹一杯に述べてみるのも無用ではないであろうと思った次第である。もし当りさわりがあったら勝手ながら屠蘇のせいと見遁《みのが》してもらいたい。
[#地から1字上げ](昭和十年一月『都新聞』)



底本:「寺田寅彦全集 第七巻」岩波書店
   1997(平成9)年6月5日発行
底本の親本:「寺田寅彦全集 文学篇」岩波書店
   1985(昭和60)年
初出:「都新聞」
   1935(昭和10)年1月1日
※初出時の署名は「吉村冬彦」。
※単行本「蛍光板」に収録。
入力:砂場清隆
校正:多羅尾伴内
2003年10月23日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www
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