にはこの「初恋」の少女の姿を物色する五十四歳の自分を発見して微笑する。そうしてウェルズの短編「壁の扉《とびら》」の幻覚を思い出しながら、この次にいついかなる思いもかけぬ時と場所で再びこの童女像にめぐり会うであろうかという可能性を、さじの先でかき回しながら一杯の不二家《ふじや》のコーヒーをすするのである。
[#地から3字上げ](昭和六年九月、雑味)
底本:「寺田寅彦随筆集 第三巻」小宮豊隆編、岩波文庫、岩波書店
1948(昭和23)年5月15日第1刷発行
1963(昭和38)年4月16日第20刷改版発行
1997(平成9)年9月5日第64刷発行
入力:(株)モモ
校正:かとうかおり
2003年6月25日作成
青空文庫作成ファイル:
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