瀬戸内海の潮と潮流
寺田寅彦

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)沢山《たくさん》あります。

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)百|尋《ひろ》以上も深く

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)夕凪[#「夕凪」に傍点]が
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 瀬戸内海はその景色の美しいために旅行者の目を喜ばせ、詩人や画家の好い題目になるばかりではありません。また色々な方面の学者の眼から見ても面白い研究の種になるような事柄が沢山《たくさん》あります。一体、あのような込み入った面白い地形がどうして出来たかという事は地質学者の議論の種になっているのです。また瀬戸内海の沿岸では一体に雨が少なかったり、また夏になると夕方風がすっかり凪《な》いでしまって大変に蒸暑《むしあつ》いいわゆる夕凪[#「夕凪」に傍点]が名物になっております。これらはこの地方が北と南に山と陸地を控えているために起る事で、気象学者の研究問題になります。しかし、ここには私はただ少しばかり瀬戸内海の中の水の運動の事について御話ししましょう。
 一体、海の面はどこでも一昼夜に二度ずつ上がり下が
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