数学と語学
寺田寅彦
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)相関《コーレレーション》を
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ある入学試験の成績表について数学の点数と語学の点数の相関《コーレレーション》を調べてみたことがあった。各受験者のこの二学科の点数をXYとして図面にプロットしてみると、もちろん、点はかなり不規則に散布する。しかしだいたいからいえば、やはり X = Y で表わされる直線の近くに点の密度が多いように見えた。もっとも中にはXYのいずれか一方が百点に近くて他の一方の数値が小さいような例もあるにはあったが、大勢から見れば両者の間には統計的相関があるといってもたいして不都合はなかったように記憶している。
これはきわめて当たりまえのようにも思われる。結局頭のよいものは両方の点がいいという事が、最も多くプロバブルである、といってしまえばそれだけである。しかしもしやこの二つの学科がこれを修得するに要する頭脳の働き方の上で本質的に互いに共通な因子を持っているようなことはないか。これは一つの問題になる。
ちょっと考えると数学は純粋な論理の系統であり、語学は偶然なものの偶然な寄り集まり
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