ったように思われて来るのである。
子供を育てる親たちの参考になれば幸いである。
四 宇宙線
理化学が進めば世の中に不思議はなくなるであろうと言う人がある。しかし科学が進めばかえって今まで知られなかった新しい不思議なものも出て来るのである。現在物理学者の問題となっている宇宙線などもその一例である。
宇宙のどこの果てからとも知れず、肉眼にも顕微鏡にも見えない微粒子のようなものが飛んで来て、それが地球上のあらゆるものを射撃し貫通しているのに、われわれ愚かなる人間は近ごろまでそういうものの存在を夢にも知らないでいたのである。その存在を認める唯一の手段としては、この放射線のために空気その他のガスの分子が衝撃されて電離し、そのためにそのガスの電導度にわずかながら影響し、従って特別な装置の鋭敏な電気計に感ずるという、そういう一種特別の作用を利用するほかはない。もっとも地上に存する放射性物質から発射されるいろいろの放射線もやはりこれと同様な性質をもっているのではあるが、それらのものが物質を貫通する能力に比べて比較にならぬくらい強大な貫通能力を宇宙線が享有しているために、地上の諸放射
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