小浅間
寺田寅彦
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)峰《みね》の
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)夜|琉球人《りゅうきゅうじん》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から3字上げ](昭和十年九月、東京朝日新聞)
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峰《みね》の茶屋《ちゃや》から第一の鳥居をくぐってしばらくこんもりした落葉樹林のトンネルを登って行くと、やがて急に樹木がなくなって、天地が明るくなる。そうして右をふり仰ぐと突兀《とっこつ》たる小浅間《こあさま》の熔岩塊《ようがんかい》が今にも頭上にくずれ落ちそうな絶壁をなしてそびえ立っている。その岩塊の頭を包むヴェールのように灰砂の斜面がなめらかにすそを引いてその上に細かく刺繍《ししゅう》をおいたように、オンタデや虎杖《いたどり》やみね柳やいろいろの矮草《わいそう》が散点している。
一合目の鳥居の近くに一等水準点がある。深さ一メートルの四角なコンクリートの柱の頂上のまん中に径一寸ぐらいの金属の鋲《びょう》を埋め込んで、そのだいじな頭が摩滅したりつぶれたりしないように保護するために金属の
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