はそれほど人にこだわらないで花が見られるようになったらしい。これが全くこだわらなくなる頃にはもう花が見られなくなるかもしれない。
二
あらゆる花の中でも花の固有の色が単純で遠くから見てもその一色しか見えない花と、色の複雑な隈取《くまど》りがあって、少し離れて見ると何色ともはっきり分らないで色彩の揺曳《ようえい》とでも云ったようなものを感じる花とがある。朱色の罌粟《けし》や赤椿などは前者の例であり、紫色の金魚草やロベリアなどは後者の例である。一体に朱赤色や濃黄色といったような熱色の花には単調な色彩が多くて紫青色がかったものや紅でも紫がかったものにはこうした色のかがよいとでもいったものがあるらしい。柱作りに適するローヤル・スカーレットという薔薇がある。濃紅色の花を群生させるが、少しはなれた所から見ると臙脂色《えんじいろ》の団塊の周囲に紫色の雰囲気のようなものが揺曳しかげろうているように見える。
人間の色彩といったようなものにもやはりこうした二種類があるように思われる。少なくも芸術的作品はそうであるし、またことによると科学的な仕事にもいくらかそういう区別があるような
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