雑記(2[#「2」はローマ数字、1−13−22])
寺田寅彦
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)曾孫《ひまご》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)昨年九月一日|被服廠跡《ひふくしょうあと》で起った火焔の渦巻
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ](大正十三年四月『中央公論』)
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一 花火
一月二十六日の祝日の午後三時頃に、私はただあてもなく日本橋から京橋の方へあの新開のバラック通りを歩いていた。朝よく晴れていた空は、いつの間にかすっかり曇って、湿りを帯びた弱い南の風が吹いていた。丸の内の方の空にあたって、時々花火が上がっているので、上がる度に気を付けて見ていた。ちょうど中橋広小路の辺へ来た時に、上がったのは、いつものただの簡単な昼花火とはちがって、よほど複雑な仕掛のものであった。先ず親玉から子玉が生れ、その子玉から孫玉が出て、それからまた曾孫《ひまご》が出た。そしてその代の更《かわ》り目《め》には、赤や青の煙の塊が飛び出すのであった。しかしそれらの色のついた雲は、すぐに消え
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