失せて、黒い煙だけが割に永くあとに残るようであった。
 京橋の上まで来て、堀に沿うて東の方を見ると、向うの河岸《かし》と橋の上に大勢人が集まって河の方を見ている。船の中で花火を上げているのらしい。
 行ってみると、堀の真中に、かなり大きな船が一艘つなぎ留めてあって、そこが花火の打ち上げ場になっているのである。なるほど、こうして河の真中でやっていれば、いかに東京人でも、そうそう傍まで押しかけて覗《のぞ》きには行かれない訳である。これでないとずいぶん間違いが起りそうである。しかし果してそういう理由から船の中を選んだのか、あるいは他にもっと適切な理由があるのかもしれない。
 船首から船長の三分の一くらいのところに当って、横に張り渡した横木に大小四本の円筒が並べて垂直に固定してある。筒の外側はアルミニウムペイントで御化粧をしてあるが、金属製だかどうだか見ただけでは分らない。昔は花火の筒と云えば、木筒に竹のたがを幾重となく鉢巻きしたのを使ったものだが、さすがに今ではもうそんなものは使わないと見える。第一その筒の傍に立って、花火の打上げを担当している二人の技手からが、洋服に、スエター、半ズボンとい
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