して見ていた。打ち上げられた円筒は、迅速に旋転しながら昇って行ったが、開いたのを見ると、それは夜の花火によくあるような、傘形にあるいはしだれ柳のように空に天蓋を拡げるのであった。これについて一つ不審に思った事は、あれがどうしていつでも傘のように垂直線のまわりに対称的《シンメトリカル》に拡がるかという事である。なんでもない事のように思っていたが、考えてみると、これはそう簡単な問題ではなさそうである。あの円筒形がその筒の軸と直角な軸の周囲に廻転しながら昇るという事と関係があるらしいとは思うが、本当の事は鍵屋《かぎや》の職人にでもよく聞いてみた上でなければ判断が出来ない訳である。昔始めてこの花火を発明した人は偶然かもしれないが、やっぱり、少しはえらい人だったろうという気がした。
いちばん大きな筒の順番はなかなか廻って来なかった。かれこれ半時間の余も見ていたが、いっこうに此方《こっち》へは手を付けない。自分の周囲で見ている連中にもやはりそれが気になるらしい事を云い合っているのがあった。私は自分が子供の時に九段上の広場で見た、手拭を撚《よ》ってこしらえた蛇《へび》を地上において、それが今に本当
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