の森陰の小屋に日當りのいゝ縁側なりヴェランダがあつて其處に一年の中の選ばれた數日を過すのはそんなに惡くはなささうに思はれた。
ついそんな田園詩の幻影に襲はれた程に今日の夕陽は美しいものであつた。
永い間宅にばかりくすぶつて居て、適※[#二の字点、1−2−22]《たま/\》此の好い時節に外の風に吹かれると氣持はいゝやうなものゝ、餘りに美しい自然と其處にも附き纏ふ世の中の刺戟が病餘の神經には少し利き過ぎるやうでもある。もうそろ/\寒くなるし、寫生行もしばらく中止していよ/\靜物でもやり始めなければなるまいと思つて居る。
底本:「現代日本紀行文学全集 東日本編」ほるぷ出版
1976(昭和51)年8月1日発行
初出:「中央公論」
1923(大正11)年1月号
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:林 幸雄
校正:多羅尾伴内
2003年11月11日作成
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