に世界でいちばん不思議な奇蹟《きせき》が行なわれていたのである。その証拠には今試みに芝生《しばふ》に足を入れると、そこからは小さな土色のばったや蛾《が》のようなものが群がって飛び出した。こおろぎや蜘蛛《くも》や蟻《あり》やその他名も知らない昆虫《こんちゅう》の繁華な都が、虫の目から見たら天を摩するような緑色の尖塔《せんとう》の林の下に発展していた。
 この動植物の新世代の活動している舞台は、また人間の新世代に対しても無尽蔵な驚異と歓喜の材料を提供した。子供らはよくこれらの小さな虫をつかまえて白粉《おしろい》のあきびんへ入れたりした。なんのためにそんな事をして小さな生物を苦しめるかというような事は少しも考えてはいなかった。それでも虫の食物か何かのつもりで、むしり取った芝の葉をびんの中へ詰め込んで、それで虫は充分満足しているものと思っているらしかった。そのまま忘れて打っちゃっておいたびんの底にひっくり返って死んでいるからだを見つけた時はやはりいくらかかわいそうだとは思うらしい。それで垣根《かきね》のすみや木の下へ「虫のお墓」を築いて花を供えたりして、そういう場合におとなの味わう機微な感情の
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