もって刈られた部分を点検したあとで、我れ勝ちに争って鋏を手にした。しばらくして見に行って見ると、芝生の上にはねずみがかじったように、三角形や、片かなや、ローマ字などが表われていた。九歳になる女の子は裁縫用の鋏で丁寧に一尺四方ぐらいの部分を刈りひらいて、人差し指の根もとに大きなかわいい肉刺《まめ》をこしらえていた。
いろいろの時刻にいろいろの人が思い思いの場所を刈っていた。人々の個性はこんな些細《ささい》な事にも強く刻みつけられていた。大まかに不ぞろいに刈り散らして虎斑《とらふ》をこしらえる者もあれば、一方から丁寧に秩序正しく、蚕が桑の葉を食って行くように着々進行して行くものもあった。ある者は根もとまでつめて刈り込まないと承知しないし、またある者はある長さの緑を残すように骨を折っているらしく見えた。
書斎で聞いていると時々|鋏《はさみ》の音が聞こえたが、その音のぐあいでだれがやっているかはたいていわかった。
午前に私が刈り初めようとするとよく来客があった。そういう事が三四回もつづいた。来客を呼ぶおまじない[#「おまじない」に傍点]だと言って笑うものもあった。これは無論直接の因果関係
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