か》の結果であることは疑いもないことであろう。
対流渦による波状雲のことは今さら述べるまでもないが、これに類似の縞は、近ごろ「墨流し」の実験をしているときに、最初表面に浮かんだ墨汁《ぼくじゅう》の層が、時がたつに従って下層の水中に沈む場合にもかなりきれいに発達するのを見ることができた。
もう一つ対流渦による週期的現象で珍しいのは「構造土」と名づけられるもので、たとえば乗鞍岳《のりくらだけ》頂上の鶴《つる》が池《いけ》、亀《かめ》が池《いけ》のほとりにできる、土砂と岩礫《がんれき》による亀甲模様《きっこうもよう》や縞模様である(1)[#「(1)」は注釈番号]。これは従来からも対流渦によるものとはされていたが、実際の生成機巧についてはいろいろ想像説があるに過ぎなかった。近ごろ理学士|藤野米吉《ふじのよねきち》君が、液の代わりに製菓用のさらし餡《あん》を水で練ったものの層に熱対流を起こさせる実験を進めた結果、よほどまで、上記自然現象の機巧の説明に関する具体的な資料を得たようである。またこれによって乳房状積雲《ちぶさじょうせきうん》とはなはだしく似た形態も模倣することができた。
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