長するのが当然である。
これは少し脱線であるが、珊瑚礁《さんごしょう》を作るような珊瑚のうちに、上記の噴泉塔とも類似し、またシャボテンのうちに瓜《うり》のような格好で、縦に深く襞《ひだ》のはいったのがある、あれともいくらか似た形のものがある。ある時そういう珊瑚《さんご》の標本の写真を見ていたときに、これも何かやはり対流による柱状渦《ちゅうじょうか》と関係があるのではないかという空想が起こった。こういう生物群体の表面に沿うて何かの原因で温度あるいは濃度差による対流の起こることは可能であり、それがあるとすればその対流の結果は生物の成長に必然的に反応するであろうと思われる。とにかく、天然がただものずきや道楽であのような週期的な構造を製作するとは思われないので何かそこに物理的な条件が伏在するであろうと想像するのはやむを得ない次第である。しかしこれはそう思ったというだけのことでなんら具体的の事実を調べたわけではない。
丸皿形《まるざらがた》のボルタメーターで、皿の内面に沈着する銀がやはりこの「シャボテン式」の放射線状の縞《しま》を成すは周知のことで、この場合は、濃度差による対流渦《たいりゅう
前へ
次へ
全27ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
寺田 寅彦 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング