の格好なものが成長の萌芽《ほうが》となるであろうという想像がついたようである。この点ではやはり、物理界におけるいろいろな週期的不安定の現象、たとえば弾性板の週期的|反転《バクリング》の現象などとの類似を思わせる。
金米糖といくぶん似たものは、「噴泉塔」と称せられるものである。温泉の噴出する口の周囲に、水に溶けた物質が析出沈積して曲線的|円錐体《えんすいたい》を作る。そうして、その表面に実にみごとな放射状ならびに円心状に週期的な凸凹を作ることがある。この場合にこれらの週期性を決定するものが何であるかと考えてみる際に、いちばん手近なものとして気のつくのは、液の熱的対流によって生ずる週期的円筒形|渦流《かりゅう》である。ともかくもこの場合に著しい対流の起こることは確実であるので、それがそういう場合に普通な柱状渦《ちゅうじょうか》を成して、その結果温度の週期的排列を生じ、従って沈積も空間的に週期的になる。そうして、ある大きさの週期のものが最も安定であって、それに因る沈積の結果から生ずる凹凸《おうとつ》が、ちょうどその渦流に好都合なような器械的条件に相応すれば、この凹凸は自然に規則正しく発育成
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