が統計的に一定になるか、この疑問を年来いだいて今日に至る間に、おりにふれてはこれによく似たいろいろの問題が次第に蓄積して来た。しかし、問題が増すだけで解釈のほうは遺憾ながら、いくらも進まないが、ただ、これら類似の問題の中には、いくらか解釈の見当のつきかけたものもある。それらの問題を系統的に分類でもすればいいわけであるが、まだそこまでの整理ができていないから、ここではただ将来の参考のための備忘録だと思って、以下に思いつくままを無秩序に書き並べるに過ぎない。読者もどうかそのつもりで読んでもらいたい。
金米糖《こんぺいとう》の場合については理学士|福島浩《ふくしまひろし》君がまだ学生時代の夏休みに理化学研究所へ来ていろいろ実験した結果が発表されている。ある条件のもとには、偶然的にでき始めた凸凹《とつおう》が次第に成長し、その角《つの》の長さと粒の大きさとには一定の関係がある事、その大きさにある上下の限界のある事などがだいぶわかって来たが、角の数を決定する根本原理についてはまだ充分な解釈を下すに至らなかった。しかしこの物の形の基礎には立体的正多面体の基本定型が伏在していて、条件によってその中
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