時にはそれが整斉《せいせい》される、あれと似たことがありはしないかとも考えられる。これらもすべて大胆すぎた想像であるが一つの暗示として付記する。
 リヒテンベルグの場合に放電板の裏側にできる第二次像の同心環が米田《よねだ》氏の現象に類するのは注意すべき事である。
 近来|筒井俊正《つついとしまさ》君が研究している一種の特殊な拡進現象にもまたリヒテンベルグ陽像などといくぶん似た部類に属するものがある。それは二枚の平面板の間に粘性あるいは糊状《のりじょう》の液体を薄層としてはさんでおいて、急にその二枚の板を引き離すときにできるきれいな模様の中のあるものである。この模様の分岐のしかたにも一種の週期性がある。しかしこの場合においてもこの週期性の決定要素はなかなか簡単には説明されないものらしく思われる。
 池の表面の氷結した上に適度の降雪があった時に、その面に亀甲形《きっこうがた》の模様ができる、これには、一方では弾性的不安定の問題、また対流の問題なども含まれているようであるが、この亀甲《きっこう》模様の亀甲形の中心にできる小さな穴から四方に放射して、「ひとで」形の模様ができる。これの説明もまだ
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