はなりうると思うからついでに付記する。
リヒテンベルグの陽像はかなり不規則であるが、これもいくぶんの放射形週期性をもっている。これに類した他方面の現象としては清潔なガラス板の水平な面上に薄く清潔な水の層を作っておいて、そうして墨を含ませた筆の先をちょっとそのガラス面の一点に触れると水の薄層はたちまち四方に押しのけられて、墨汁《ぼくじゅう》が一見かわき上がったようなガラスの面を不規則な放射形をなして分岐しながら広がって行く。その広がり方の型式がリヒテンベルグ陽像に類似の点をもっている。この場合は明らかに墨のコロイド粒子群が内から外へ進行する際にその進行速度にはなはだしい異同ができ、その異同が助長されるのであろうが、この事実の形式的類推から放電陽像の場合にも、何物か粗粒的なものが内から外のほうへ広がるのではないかという想像を誘われる。また一方で前記の放射状|対流渦《たいりゅうか》の立派に現われる場合は、いずれも求心的流動の場合であるから、放電陰像の場合もあるいは求心的な物質の流れがあるのではないかと想像させる。水流の場合には一般に流線の広がる時に擾乱《じょうらん》が起こるが流線が集約する
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