が、また一方では、平行山脈の生成の説明に適用されたり、また毛色の変わった例としては、生物の細胞組織が最初の空洞球状《くうどうきゅうじょう》の原形からだんだんと皺《しわ》を生じて発達する過程にまでもこの考えを応用しようと試みた人があるくらいである。しかし単なる理論のテストでなく、現象を精察する意味での実地的方面の研究はかえって少ないようであるが、わが国で地球物理の問題に関係して藤原《ふじわら》博士や徳田《とくだ》博士の行なわれたいろいろの実験はこの意味においてきわめて興味の深い有益なものである。それからこれは少し変なものではあるが猫《ねこ》の毛並みにも時として週期性の縞状の疎密を呈することがある。あれもこの皺の問題といくぶん連関しているらしく思われるが詳しいことはわからない。これも一つの問題ではある。
裂罅、あるいは「われめ」の生成は皺襞と対立さるべきものでやはり一種の不安定によって定まるものであろうが、このほうの研究はまだきわめて進捗《しんちょく》していない。理論的に言えば、破壊の起こる直前までの過程についてはプラスティックな物体の力学からある程度まではこぎつけられるが、ほんとうに破
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