なると、やはりわからないことがかなりありそうである。木の年輪にしても、これを支配する気象的要素の週期曲線はともかくもかなり平滑で連続的であるのに、杉《すぎ》の木の断面の半径に沿うての物理的性質の週期的曲線は必ずしも連続的平滑ではないのである。鮭《さけ》の耳石の環状構造にしても、一年の間に存するたくさんの第二次週期の意味がわかりにくい。それはそれとしても、ともかくも気象変化の週期性に反応し、あるいは共鳴するだけの週期性が内在するのでなければこういう現象は起こらないのではないかと考えられる。
岩塩の縞《しま》の数から沈積期間の年代の推算をした人もあるが、これにも多くの疑問が残されるであろう。砂岩や凝灰岩の縞なども、やはりこれらと連関して徹底的に研究さるべき題目であろう。
岩石に関してはまだ皺襞《しゅうへき》や裂罅《れっか》の週期性が重要な問題になるが、これはまた岩石に限らず広く一般に固体の変形に関する多種多様な問題と連関して来るのである。
弾性体の皺襞については従来「弾性的不安定」の問題として理論的にもかなりたびたび取り扱われたもので、工学上にもいろいろの応用のあるのはもちろんである
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