》相対性原理の研究と共にさらに多くの変更を余儀なくされた。この原理の発展以来「時」の観念はよほど進化して来たが、それはやはり幾何学の「時」の範囲内での進歩である。
 吾人の直感する「時」の観念に随伴して来る重大な要素は「不可逆」ということである。この要点は時を空間化するために往々閑却されるものである。空間の前後は観者の位置をかえれば逆になるが時間は一方にのみ向かって流れている。抽象的な数学から現実の自然界に移ってその現象を記載しようとする時には空間化された時だけでは用の弁じない場合が起こる。それはいわゆる不可逆現象の存在するため、熱力学第二方則の成立しているためである。
 この方則の設立、エントロピーの概念の導入という事が物理学の発達史上でいかに重大なものであったかという事は種々の方面から論ずる事ができようが、ここで述べたいと思うのは、空間化された「時」だけでは取り扱う事のできぬ現象を記載するために最も便利な「時」の代用物を見いだした事である。
 もしかりに宇宙間にただ一つ、摩擦のない振り子があって、これを不老不死の仙人が見ている、そして根気よく振動を数えているとすればどうであろう。こ
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