カのコンゴー河口に近い海岸で一夜に降る露の量は地面を一|分《ぶ》ほどの深さに蔽うに足るという。[#地から1字上げ](明治四十一年九月十七日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]

         四

      鳩吹《はとふく》

 古書には「鳩をとるとて手を合せて鳩の声のようにふきならすなり」とある。丁度フラスコの口に斜めに呼気《いき》を吹き付ける時に出る音と同じ訳で、両掌の間の空洞内の空気が振動して音を出すのである。この種類のものではその音の調子は空洞が狭くて口の穴の広いほど高くなる。唸《うな》り独楽《ごま》の音なども同じような例である。また栗の実に小さい穴を穿《うが》って中実を掘出し穴から長い糸を出しその糸の端をもって栗の殼を烈しく振り廻すと音を出すがあれも同理である。この種類のものは大抵ウ行に近い音を出す。人間の声でもウ行に音を出すには口を狭く突き出さねばならぬ。「吹く」という言葉も頬を膨《ふく》らし口をすぼめた時に出る声から起ったものであろう。[#地から1字上げ](明治四十一年九月二十五日『東京朝日新聞』)
[#改ページ]

         五

      秋分

 昨日
前へ 次へ
全12ページ中4ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
寺田 寅彦 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング