と悪い影響を救うための安全弁の作用をしているに相違ない。それで医術がもっともっと進歩すると、精神のけがでもこれら天然の妙機を人工的に幇助《ほうじょ》することによって楽に治療できるようになるかもしれない。
 自分が今ここでこんな空想を起こしているのも、事によると子供のけがでびっくりして少し頭が変になったせいかもしれないし、それならばまた、こんな事をおくめんもなく書く気になるのは、その天然自然の治療法を無意識に実行しているのかもしれないのである。
[#地から3字上げ](昭和八年一月、工業大学蔵前新聞)



底本:「寺田寅彦随筆集 第四巻」小宮豊隆編、岩波文庫、岩波書店
   1948(昭和23)年5月15日第1刷発行
   1963(昭和38)年5月16日第20刷改版発行
   1997(平成9)年6月13日第65刷発行
入力:(株)モモ
校正:かとうかおり
2003年7月6日作成
青空文庫作成ファイル:
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