鎖骨
寺田寅彦
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)眉骨《びこつ》を打ったと見えて
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)鎖骨|挫折《ざせつ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から3字上げ](昭和八年一月、工業大学蔵前新聞)
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子供が階段から落ちてけがをした。右の眉骨《びこつ》を打ったと見えて眼瞼《がんけん》がまんじゅうのようにふくれ上がった。それだけかと思っていたが吐きけのあるのが気になった。医者が来て見ると、どうも右肩の鎖骨が折れているらしいというので驚いて整形外科のT博士に診《み》てもらうとやはり鎖骨がみごとに折れている。しかしそのほうはたいした事ではない。それよりも右耳の後上部の頭蓋骨《ずがいこつ》をひどく打ったらしい形跡があって、そのほうがはなはだ大事だというので、はじめはたいした事でもないと思った事がらがだんだんに重大になって来た。T氏の話によると、頭を打ってから数時間の間当人はいっこう平気で、いつものように仕事をしていて、そうして突然意識を失って倒れることがよくあるそうである。
それは
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