根岸庵を訪う記
寺田寅彦
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)寓居《ぐうきょ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)二台|幌《ほろ》を
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「虫+召」、第4水準2−87−40]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)じろ/\見物の顏を見ている
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九月五日動物園の大蛇を見に行くとて京橋の寓居《ぐうきょ》を出て通り合わせの鉄道馬車に乗り上野へ着いたのが二時頃。今日は曇天で暑さも薄く道も悪くないのでなかなか公園も賑《にぎ》おうている。西郷の銅像の後ろから黒門《くろもん》の前へぬけて動物園の方へ曲ると外国の水兵が人力《じんりき》と何か八釜《やかま》しく云って直《ね》ぶみをしていたが話が纏《まと》まらなかったと見えて間もなく商品陳列所の方へ行ってしまった。マニラの帰休兵とかで茶色の制服に中折帽を冠《かぶ》ったのがここばかりでない途中でも沢山《たくさん》見受けた。動物園は
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