、どちらも日本の「アル」に似ているからおもしろい。英語の or でも少しは似ている。Skt. の「または」「あるいは」は athawa である。
ロシアで「すなわち」というような意味で、znatchiti を使う。日本の snaati と似ている。
また tak kak というのがいろいろの意味に使われるが whereas の意味では、「それはそうととにかく」の「兎角《とかく》」に通じなくない。兎《うさぎ》の角《つの》ではどうにも手に合わない。
ドイツの noch(=nun auch) が日本語の naho に似ている。イタリアの eppure は日本の「ヤッパリ」と同意義である。
因果関係はわからなくても似ているという事実はやはり事実である。
ことばの事実を拾い集めるのが言葉の科学への第一歩である。玉と石とを区別する前には、石も一応採集して吟味しなければならない。石を恐れて手を出さなければ玉は永久に手に入らない。
[#地から2字上げ](昭和八年四月、鉄塔)
三
春(ハル)のラテン語が ver であるが、ポルトガル語の 〔vera:o〕 は夏である。ペルシア
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