記録狂時代
寺田寅彦
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)猖獗《しょうけつ》をきわめた
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)障子|唐紙《からかみ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から3字上げ](昭和八年六月、東京朝日新聞)
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何事でも「世界第一」という名前の好きなアメリカに、レコード熱の盛んなのは当然のことであるが、一九二九年はこのレコード熱がもっとも猖獗《しょうけつ》をきわめた年であって、その熱病が欧州にまでも蔓延《まんえん》した。この結果としてこの一年間にいろいろの珍しいレコードが多数にできあがった。それら記録の中で毛色の変わったのを若干拾いだした記事が机上の小冊子の中で見つかったから紹介する。
シカゴ市のある男は七十九秒間に生玉子を四十個まるのみしてレコードを取ったが、さっそく医者のやっかいになったとある。ずっと昔、たしか南米で生玉子の競食で優勝はしたが即死した男があった。今度のレコードは食った量のほかに所要時間を測定してあるのが進歩である。時間が無制限ならば百や二百の生玉子をのむのは容易
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