留める」のにはやはり電光石火の空中曲技が必要な場合が多いように思われる。たとえば実験的科学の研究者がその研究の対象とする物象に直面している際には、ちょうど敵と組み打ちしているように一刻の油断もならない。いつ何時《なんどき》意外な現象が飛び出して来るかもわからないのみならず、眼前に起こっている現象の中から一つの「事実」を抽出し、仕留めるには非常な知能の早わざを要するものである。
もっともいわゆる、ルーティン的な仕事であって、予定の方法で、予定の機械の指示する示度を機械的に読み取って時々手帳に記入し、それ以外の現象はどんな事があっても目をふさいで見ないことにする流儀の研究ではなんの早わざもいらない、これには何も人間でなくてもロボットもしくは自記装置を使えばすむことである。しかしこれでは決して予想以外の新しいことの見つかる気づかいはないであろう。瞬間に過ぎ去るような現象を捕えるのにはやはり「水ぎわまでの間に敵を仕留める」呼吸を要するであろう。またそういう瞬間的な現象でなく持続的な現象でもそれが複雑に入り組んだものである場合にその中から一つの言明を抽出するのはやはり一つの早わざである。観察者
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