窮理日記
寺田寅彦
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)ばらばらに笊《ざる》へ入れて
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)蜻※[#「虫+廷」、第4水準2−87−52]《とんぼ》の眼のように
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十日 動物教室の窓の下を通ると今洗ったらしい色々の骸骨がばらばらに笊《ざる》へ入れて干してある。秋の蠅《はえ》が二、三羽止ってやや寒そうに羽根を動かしている。
十一日 垣にぶら下がっていた南瓜《かぼちゃ》がいつの間にか垂れ落ちて水引《みずひき》の花へ尻をすえている。我等が祖先のニュートンはいかにエライ者であったかと云う事を考えると隣の車井戸の屋根でアホーと鴉《からす》が鳴いた。
十二日 傘を竪にさす。雨は横に降る。
十三日 豆腐屋が来た。声の波の形が整わぬので新米《しんまい》という事が分る。
十四日 雪隠《せっちん》でプラス、マイナスと云う事を考える。
十五日 今日のようなしめっぽい空気には墓の匂いが籠っておるように思う。横になって壁を踏んでいると眼
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