チューインガムを尊崇することと、ロシア式イデオロギーを噛んで喜ぶこととは、全く縁のないことでもないかと思われた。
 それから三、四列前の腰掛けに、中年のインテリ奥様とでも言われそうなのが二人、それはまた二人おそろいでキャラメルらしいもの――噛み方でわかる――を噛んでいるのが、ちょっとおもしろい対照をなしていた。
 イデオロギーに砂糖がはいっているのである。
 芝居(?)「恐山鉱山《おそれやまこうざん》」を少し見てから降参して出てしまった。
 恐ろしいものである。
 今度会った時に話しましょう。[#地から1字上げ](昭和六年九月、渋柿)
[#改ページ]

   曙町より(五)


 僕はこのごろ、ガラス枚を、鋼鉄の球で衝撃して、割れ目をこしらえて、その割れ方を調べている。
 はなはだばかげたことのようであるが、やってみるとなかなかおもしろいものである。
 ごく軽くたたいて、肉眼でやっと見えるくらいの疵《きず》をつけて、それを顕微鏡でのぞいて見ると、球の当たった点のまわりに、円形の割れ目が、ガラスの表面にできて、そこから内部へ末拡がりに、円錐形《えんすいけい》のひびが入っているが、そのひび
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