い日であった。
 間違えて、労働者切符の売り場へ行ったら「職場《しょくば》」のかたですか、と聞かれたが、なんのことかわからないで、ぼんやりしながら、九十銭耳をそろえて並べたら、「どうかすみませんがあちらでお求めを願います」とたいへんに親切丁寧に教えてくれた。
 資本主義の帝劇《ていげき》や歌舞伎座《かぶきざ》のいばった切符嬢とはたいした相違でうれしかった。
 入場してまず眼についたのは、カーテンの下のほうに「松屋」という縫い取りの文字で、これが少し不思議に思われた。
 観客はたいてい若い人が多く、旧式ないわゆる小市民の家庭のお嬢さんらしい女学生も、下町ふうな江戸前のおとなしい娘さんたちもいるのが特に目についた。
 中年の、もっともらしいおばさんたちもぽつぽつ見えた。
 男の中には、学生も多いが、中にはどうも刑事かと思うようなのもいた。
 みんな平気で上着を脱いでいるのは、これもなんとなく愉快であった。
 いわゆるナッパ服を着て、頭を光らせ、もみ上げを剃《そ》り上げた、眼の鋭い若者が二人来て隣に腰かけた。
 それがニチャニチャと止《やす》みなしにチューインガムを噛んでいる。
 アメリカ式
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