までむしばまれていて、気のゆるむと同時に一時に発した疲れのために朽ち木のように倒れる。そういう場合もかなりありうるわけである。
また従来すでに一通りの成効の道を進んで来た人が、いよいよ隠退でもして老後を楽しむために新しい邸宅でも構えようというような場合にも、やはり同じような事がいわれようかと思う。
植物が花を咲かせ実を結ぶ時はやがて枯死する時である。それとこれとは少しわけは違うがどこか似たところもないではない。
いつまでも花を咲かせないで適当に貧乏しながら適当に働く。平凡なようであるが長生きの道はやはりこれ以外にはないようである。[#地から1字上げ](昭和十年十月十一日)
[#改ページ]
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夜中にからだじゅうの痛む病気に罹《かか》って一晩じゅう安眠ができない。この広い世界のすべての存在が消えてしまって自分のからだの痛みだけが宇宙を占有し大千世界に瀰漫《びまん》しているような気がしている。夜が明けて繰りあけられた雨戸から空の光が流れ込む。ガラス障子越しに庭の楓《かえで》や檜《ひのき》のこずえが見え、隣の大きな栗の樹の散り残った葉が朝風にゆれていて、その向こうい
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