の映画を見るといいと思う。
この酋長《しゅうちょう》の子が食われたので、映画師らは酋長に合わせる顔がないといってしょげる場面はどうも少し芝居じみる。A life for a life というタイトルが出たから映画師が殺されるかと思ったら、そうでなくてやはりライオンが一匹やられるのである。しかしライオンなどは少しも芝居しないから愉快である。ライオンが自動車のタイアを草原に見いだして前足でつついてみては腹を立ててうなる場面は傑作である。ライオンがふきげんであればあるほど観客は笑うのである。もしか自分がライオンだったら、この不都合な侵入者らに対してどんなに腹の立つことであろう。
アフリカは世界の動物園、野獣の楽園として永久に保存したい。天然物保存地帯として少なくもこの大陸内地の大部分を万国協定で指定してほしいと思うのである。
獅子《しし》のいる草原の中にどうも地震による断層らしく見えるものが写っている。あとで地震学者に聞いてみると、あのタンガニイカ湖付近には実際大地震による断層が縦横に通っているのである。この一部が偶然にライオンの背景の中に出ているのも実写映画の妙味である。
蛮人の顔
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