らいわゆるストーリーあるいはシュジェーが定められる。これはたとえば数行のものであってもよいがともかくも内容のだいたいの筋書きができるのである。それをもう少し具体的な脚本すなわちシナリオに発展させる。しかしそれではまだすぐに撮影はできない。シナリオに従って精細な撮影台本が作られなければならない。それには撮影さるべき対象選定はもちろんそれがいかなる条件においていかに撮影さるべきかが具体的に精細に設計規定されなければならない。それができて後に関係部員のそれぞれの部署が決定されなければならない。一方では精密な予算も組まれなければならない。
これまでの過程はすべて「分析」の過程である。出発点における主題に含まれているものを順次にその構成要素に解きほごして行ってその各部の具体的設計を完成する過程である。
このようにしてできた設計が完成すれば次には、これらの各部分が工人の手によって実物に作り上げられなければならない。すなわち一つ一つの場面の一つ一つのショットの断片が撮影される。同じものが何度も何度も、監督の気に入るまでとり直される。この場合には脚本中における各ショットの位置や順序にはかまわず、背
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