映画「マルガ」に現われた動物の闘争
寺田寅彦
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)虎《とら》や豹《ひょう》の闘法
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)猛獣|大蛇《だいじゃ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から3字上げ](昭和八年三月)
−−
映画「マルガ」の中でいちばんおもしろいと思ったのは猛獣|大蛇《だいじゃ》などの闘争の場面である。
闘争を仕組んだのは人間であろうが、闘争者のほうではほんとうに真剣な生命をかけた闘争をして見せるのであるから、おもしろくないわけには行かないのである。
動物によってそれぞれに武器がちがい、従って闘争の手法がちがうのがおもしろい。虎《とら》や豹《ひょう》の闘法は比較的にいちばん人間に似ている。すなわち、かみつく、引っかく、振り飛ばすというのである。ところが、水牛となるとだいぶ人間とは流儀が違う。頭を低くたれて、あの大きな二本の角《つの》を振り舞わすところは、ちょっと薙刀《なぎなた》でも使っているような趣がある。鋒先《ほこさき》の後方へ向いた角では、ちょっと見るとぐあい
次へ
全5ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
寺田 寅彦 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング