現象と連関して起こるから、その点で後に述べる時間分布の関係から言って多少この説に有利な点はある。しかしいわゆる光の現象やまた前述のまじないの意味は全くこれでは説明されない。
 これに反して、ギバがなんらかの空中放電によるものと考えると、たてがみが立ち上がったり、光の線条が見えたり、玉虫色の光が馬の首を包んだりする事が、全部生きた科学的記述としての意味をもって来る。また衣服その他で頭をおおい、また腹部を保護するという事は、つまり電気の半導体で馬の身体の一部を被覆して、放電による電流が直接にその局部の肉体に流れるのを防ぐという意味に解釈されて来るのである。
 またこういう放電現象が夏期に多い事、および日中に多い事は周知の事実であるので、前述の時間分布は、これときわめてよく符合する事になる。
 場所のおのずから定まる傾向については、自分は何事も具体的のことをいうだけの材料を持ち合わせないが、これも調べてみたら、おそらく放電現象の多い場所と符合するようなことがありはしないかと想像される。
 しかしこの仮説にとって重大な試金石となるものは、馬のこの種の放電に対する反応いかんである。すなわち人間に
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