な材料として伊吹山および付近の各地測候所における冬季の降水日数を調べて送ってもらった。その詳細の数字は略するが、冬期すなわち十二月一月二月の三か月中における総降水日数を、最近四か年について平均したものをあげてみると、次のようである。
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伊吹山 六九、二 岐阜《ぎふ》 四十、二
敦賀《つるが》 七二、八 京都 四九、二
彦根《ひこね》 五九、〇 名古屋《なごや》 三〇、二
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すなわち、伊吹山は敦賀には少し劣るが、他の地に比べては、著しく雨雪日の数が多い、名古屋などに比べると、倍以上になるわけである。冬季三か月間、九十日のうちで、約六十九日、すなわち約七十七パーセントは雨か雪が降る勘定である。筒井氏の調査によると、冬季降雪の多い区域が、若狭《わかさ》越前《えちぜん》から、近江《おうみ》の北半へ突き出て、V字形をなしている。そして、その最も南の先端が、美濃《みの》、近江、伊勢《いせ》三国の境のへんまで来ているのである。従って、伊吹山は、この区域の東の境の内側にはいっているが、それから東へ行くと降雨日数が
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