伊吹山の句について
寺田寅彦

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)芭蕉《ばしょう》俳句研究

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)その後|小宮《こみや》君に

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から3字上げ](大正十三年二月、潮音)
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 昨年三月の「潮音」に出ている芭蕉《ばしょう》俳句研究第二十四回の筆記中に

[#ここから3字下げ]
  千川亭《せんせんてい》
おりおりに伊吹《いぶき》を見てや冬ごもり
[#ここで字下げ終わり]

という句について、この山の地勢や気象状態などが問題になっていて、それについていろいろ立ち入った研究があったようである。私もこの問題については自分の専門の学問のほうからも特別の興味を感じたので、それについての私の考えを、その後|小宮《こみや》君に話した事があった。当時その事について何か書いてみたらどうかという話もあったが、充分具体的な材料が手もとになかったから、ついそのままになっていたのである。近ごろ思い出して、急に材料を捜しにかかったが、容易に見つからず、とうとう彦根《ひこね》測
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