学手続をすませた。東京帝国大学の卒業証書も検閲のために差出したが、この日本文は事務の役人にとって自分の場合のラテン語以上に六《むつ》かしそうであった。色々記入する書式の中の宗教という項に神道と書いたら、それはどういう宗教だと聞かれて困った。ドイツ語がよく分らなくては講義を聴くのに困りはしないかと聞くから、なにじきに上手になりますと答えたら Na ! Sehen Sie mal zu. と云ってにやにやした。最後の zu が妙にいつまでも耳に残って気になった。
ベルリン着早々、中村気象台長からの紹介状をもってヘルマン教授を尋ね聴講科目などの指導を仰いだ。結局第一学期には、プランクの「物理学の全系統」ヘルマンの「気象器械の理論と用法」並びに「気象輪講」ルーベンスの「物理輪講」アドルフ・シュミットの「海洋学」「地球のエネルギーハウスハルト」「地球物理輪講」キービッツの「空中電気」ワールブルヒの「理論物理学特別講義」ペンクの「地理学輪講」という御膳立にきめた。
ヘルマンの講義はシンケル・プラッツの気象台へ聴きに行った。王宮と河一つ隔てた広場に面した四角な煉瓦造りの建物で、これは有名なシンケ
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