総長の演説があったが何を云っているか自分にはちっとも分らないので少々心細くなった。それから新入生一人一人に総長が握手をするというので、一列に並んで順々に繰出して行った。世話をやいている事務官らしいのが自分に向って何か言っているが、何を云ってるか分らない。左右田君に聞くと Wollen Sie dort anschliessen ? と云っただけなのだそうである。カール総長の握手の力の強いのにびっくりした。総長にでもなる人にはやはりそれだけの活力があるのかと思われた。
入学証書と云ったような幅一尺五寸|長《たけ》二尺ほどの紙に大きな活字で皇帝や総長の名を黒々と印刷したものを貰ったが文句はラテン語で何の事か分らない、見ていると気の遠くなるようなものであった。日附の所に D. Berolini d. 19. mens. V anni MDCCCCIX とあって下に総長の署名がある。「ベルリン」までがラテン化しているのでまた少し驚いた。それからもう一枚哲学部長の署名のあるこれもラテン語の入学免状を貰った。
式の前であったか後であったか忘れたが、大学の玄関をはいって右側の事務室でいろいろの入
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