てこの政治家の余技を評している。この頃またグラドストーンにも会った。そうしてこの大政治家の能力と独創的天分とに感服すると同時に、科学的考察力の欠乏を認めた。グラドストーンは雪が長靴の革を滲透する特殊な力があるということを主張した。レーリーは、それは靴の上部にかかった雪が靴の中へ落ち込むのだと云って説明したが、結局どうしても了解を得ることが出来なかった。
一八七一年の五月にイヴリン・バルフォーアと婚約し、七月十九日に結婚式を挙げた。大学における fellowship は未婚者のみに許されるという規則であったので、結婚と同時に大学との縁は切れることになった。これは「将《まさ》に来らんとする私の生活の転機の暗黒面だ」と云った。新婚旅行の途次にエディンバラの British Association に出席し、そこで始めてウィリアム・タムソンやテートと親しく言葉を交わした。旅行後ターリングに帰って秋と冬を送った。その間に彼等の新家庭を営むべき Tofts(Little Baddow における邸宅の名)の工事を監督するため毎週二、三度は新郎新婦|駒《こま》を並べて出かけて行った。
一八七二年正
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